ミツバチと暮らす


下呂温泉街から20分ほど車で走ると、竹原という穏やかな農村地域がある。
そこに、かわいらしく「はちみつ」と書かれた看板をかがげる「梅田養蜂」では、夫婦2人で25年以上はちみつを作り続けている。

竹原は、春になると様々な花が咲く自然豊かな地域で、毎年4月の始め頃から6月中旬までがミツバチの活動期。
ミツバチは、菜の花はもちろん、さくらや柿、梨、南天など、草木の花から一匹につきスプーン一杯の蜜を集める。
梅田さんはミツバチの負担がないよう、自然そのままの環境を求め、近隣の野山に約100箱の巣箱を置き採蜜をしているという。

「ミツバチって賢いんですよ。気温や天気の変化を敏感に感じている。」
そう話す梅田さんは長年、そのミツバチと熱心に向き合ってきた。

梅田養蜂の養蜂家としてのこだわり

「うちの1番のこだわりは、『完熟の味』。ミツバチが持って帰ってきた蜜をいつ採蜜するかによって味が違ってくるんです。巣に入ったばかりの蜜はまだ未熟で味もサラッとしているので、うちの場合は充分に熟成して水分が飛んだタイミングを見計らって巣箱から取り出します。なので、味は濃くなり粘りもあるはちみつになります。採れる量は減ってしまうけど、しっかりとした味に自信はあります。」
水分が飛んだ巣は、硬くなってしまうので、蜜を取り出すのも一苦労なんだとか。でもその手間を惜しむことはしない。
こうした長年の実績から、リピーターも多く、わざわざお客さんから電話をもらうこともあるそうだ。

ミツバチを育てるということ

「養蜂は、なによりも自然環境と密接に関わります。ミツバチの習性を観察し、自然環境や天候の変化に敏感になり、様々なタイミングを見極めていく必要があります。だから単年で良い悪いを判断するのではなく、5年を1つの区切りとして長期的に蜂と向き合うようにしています。
小さなハチを飼っているわけだから、1年悪い年、1年良い年、あとは標準、くらいだということは覚悟しています。」

最後に、ミツバチを育てる面白さとは何かを聞いてみると、

「それはやっぱり、苦労や手間、難しさがあることじゃないかな」と笑った。
「どうすればいいかを考える難関があるからこそ、面白さや達成感につながる、というのは何でも同じだよね。」


気候も環境も緩やかだけど確実に変化していく中で、戦うというよりは、適応していく方法を考えていく。そういった梅田さんの柔軟さが長年の歴史をもつ秘訣なのかなと感じた。

梅田さん夫婦のあたたかく真面目な想いが、このはちみつにもつまっているに違いない。