飛騨小坂の伝統食「えごま」からはじまる地域活性

健康をつくる黄金の油

下呂市小坂地区(旧益田郡小坂町)は、市の最北部に位置し、面積の約98%が山林で占められている山間地域になります。

かつて木材価格が高かった時代(70年代まで)は主要産業である林業が栄え町にも活気があったものの、木材価格の下落とともに林業が衰退し、新たな産業への転換がうまくいかなかったことで働く場が減り、人口の減少へとつながりました(現在では過疎地域指定を受けています)。

農業就業者は、この30年で3分の1以下になり、新たな地域の担い手対策も急務となっています。こうしたなか、豊富な森林資源や御嶽山を水源とした「小坂の200滝」を活用した「小坂の滝めぐり」がアウトドアファンに人気を集め、若者を呼び込むひとつの誇れる要素となってきています。また、御嶽山の7合目に位置する御嶽濁河高地トレーニングセンターでは、スポーツ選手の誘致を行っており、地域の活性化に向けての新しいチャンスが今始まっています。

そんな中、「えごま」をもうひとつの地域の誇りとして都市部へ向けて地域PRをしていきたい、その思いが地域のなかで広がっています。伝統的な食材ということだけでなく、「健康」を多くの人に届けることができるのも魅力のひとつです。

飛騨小坂のえごま油を世に出すために

下呂市小坂地域のエゴマプロジェクトは、地域の生産者で構成される飛騨小坂えごま生産組合と、地元企業の熊﨑組、岐阜県下呂市が中心となり協働し行なっています。それだけでなく、えごま五平餅の代々続く味をまもり続けるお母さんたち、道の駅はなもも、商工会など、生産から加工につながるプロジェクトとして多くの方々が参画しています。

2年前、えごまを次世代にもつなげようと、各家庭でえごまを育てている生産者が集まり生産組合を設立しました。高齢者ばかり、手作業ですべての行程を行う生産者のなか、地域活性のためにと地元企業が参入し、視察や試験栽培を繰り返し、新たな技術も取り入れた栽培方法を確立してきました。

昔ながらの生産の方法から、機械を導入する栽培方法ができるようになり生産量も安定してきた今、クラウドファンディングを活用して、搾油機を導入してきます。地域で油を生産できるようになることにより、新しい商品の開発やプロモーションを地域ぐるみでおこなっていきます。

人だけじゃない、田畑も森も健康であるために

第一の想いは、年々増える耕作放棄地を少しでも解消したい、ということです。えごま栽培により雇用、開発、販売という新しい循環ができてゆくことで、高齢者が田畑を維持することが難しくなってしまった場合でも、地域でその田畑を活用する受け皿を持てることになります。

「年をとって、1人暮らし、田んぼも畑もこれからどうすればいいのか、、、。このままでは荒れ地になってしまう」そんな高齢者の想いも次世代が受け継ぐことができるのです。

また、エゴマの機能性成分が注目され、高い抗酸化力を示す成分など、老化防止効果が研究されています。下呂市小坂は伝統食えごまで健康のまちとなり、道の駅ではえごま五平餅とともにえごまの機能性にこだわたった食事ができるようになり、地域がえごまによって活気づくことを目指しています。